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みそ汁
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英語のsoupは、飲むものではなく食べるという感覚があります。 日本の汁物とはちょっとニュアンスが違いそうです。
和食に欠かせないのは、何といってもみそ汁です。 全国各地で様々な種類のみそが作られ、みそ汁の味も千差万別。家々でもそれぞれに違った具とみそを使い、その家にしかない味が生み出されています。まさに「おふくろの味」の代表でしょう。
みそ汁は一般的にmiso soupと訳されていますが、実は日本の汁ものと英語のsoupでは、少し概念が異なります。 日本ではみそ汁は「飲む」という動詞を使いますが、英語のsoupはたいていeat soupと表し、「食べるもの」として捉えるのです。 もともと西洋のsoupは、肉や野菜を煮込んだ汁などにパンを浸して食のでした。パンはもともと保存食ですぐに固くなってしまうので、パンをおいしく食べるための知恵としてスープという料理が生まれたのです。現代のスープに見られるクルトンは、パンを浸してスープを食していた時でしょう。ですからもともとスープは、パンも汁も具も合わせたものであり、それだけで一食を済ませるほどボリュームのあるものでした。そのため今でも英語では、カップで飲む場合などはdrink a cup of soupということもありますが、基本的にはsoupは食べるものであり、eat soupと言うのが普通です。 そう考えると、もともと英語のSoupは、日本の雑炊や雑煮、あるいはお茶漬けやご飯にみそ汁をかけた、いわゆる「汁かけご飯」にイメージが近かったのかもしれません。
一方、日本の食文化においては、みそ汁も含めて汁ものは米飯や雑穀飯の副食と位置づけられていて、それだけで一食になるものではありません。 日本料理ではよく「一汁三菜」を基本の形としますが、この一汁は主食の飯の食欲増進に役立ち、特にみそ汁の場合、タンパク質と塩分を補給する大事な役割を果たしてしぼした。日本の汁ものは、主食の飯に対する「副」の存在とされ、ご飯と同時に食するのが常識です。一方、現代の西洋料理においては、soupは主菜の前に食されるのが普通です。 そうしたことから日本では、みそ汁を「食べる」ものというより「飲む」ものと位置づけるのです。
余談ですが、ハノイのある日本料理店でスキヤキやてんぷらを含む和食のコースを注文したことがあります。 最初にみそ汁だけが出され、いつまでたっても次の料理が来ないので、ウェイターに「他の料理は?」とたずねると、「Finish the soup first!」(スーブを食べ終えてからね!)と言われてしまいました。